生体内における硫酸化は、生体外異物の解毒代謝機構や内因性の生理活性物質(ステロイドホルモン、カテコールアミン神経伝達物質など)の不活性化と濃度調節機構として研究されてきた。近年、リトコール酸をはじめとした二次胆汁酸の解毒代謝に硫酸化が関与することが知られ注目されている。本研究では、マウスにおいて胆汁酸のC-7位の水酸基を特異的に硫酸化する新規硫酸転移酵素(SULIT2A4)の生理機構の解明を目的とした研究を行う。 ミュータント酵素を用いて、コール酸をモデル基質にした場合のKmおよびVmaxなどの酵素反応パラメーターを検討した結果、L99H、H48T、H48N、E237A、E237QでVmax/Kmの値が低下した、すなわち全ての変異酵素で反応効率が低下した。特に、L99H、H48T、H48Nでは著しい反応効率の低下であった。さらに、L99H、H48T、H48NはKm値を著しく大きくしたことから、基質との親和性に関わる残基であることが判明した。 マウスでは、SULT2A4が特異的に胆汁酸硫酸化に関与するが、ヒトやゼブラフィッシュなど異なる生物種ではどの硫酸転移酵素が胆汁酸硫酸化に関与するのか確認し、ヒトではSULT2A1が、ゼブラフィッシュではSULT3 ST2およびSULT3 ST3が幅広く胆汁酸硫酸化に関与することを明らかにした。 これらの結果より、マウスSULT2A4は、胆汁酸C-7位の水酸基を特異的に硫酸化する非常にユニークな硫酸転移酵素である。その生理機能としては、細胞毒性の高い2次胆汁酸の生成を抑える機構への関与が考えられた。すなわち1次胆汁酸から2次胆汁酸への腸内細菌による代謝の初期に関わるC-7位の脱水酸化をあらかじめ硫酸化しておくことで抑制し、毒性の高い2次胆汁酸の生成を抑制する解毒機構として機能している可能性が考えられた。
|