1、 組換え糖鎖遊離による糖タンパク質からの糖鎖遊離 糖タンパク質プロテオミクス研究に際して、大腸菌で発現した組換え糖鎖遊離酵素を用いて各種糖タンパク質から糖鎖構造特異的に糖鎖を切り出すために、組換え酵素の発現と精製を行った。その結果、精製の過程で発現酵素の安定性が低下することを見出した。そこで、誘導条件を検討することによって、精製の過程を通じて安定な酵素を発現することができ、これを分離精製することができた。精製した発現酵素は各種糖タンパク質からコンプレックス型糖鎖を容易に遊離することを明らかにした。このとき、糖タンパク質の高次構造の変化によって酵素の糖鎖遊離作用が変化することを見出した。また、体液や細胞などの生体試料に精製酵素を作用させたところ、これらに存在する糖タンパク質から糖鎖を遊離することを見出し、生体試料の糖鎖分析への利用の可能性が示唆された。 2、糖鎖遊離酵素遺伝子への変異導入 PCRの反応条件を変えることによって糖鎖遊離酵素遺伝子にランダム変異を導入した。そして、変異導入酵素の糖タンパク質からの糖鎖遊離作用を調べた。その結果、様々な変異導入遺伝子が得られた。これらを発現させたところ、糖タンパク質からコンプレックス型糖鎖を遊離する活性の低下した変異導入酵素が得られた。また、結合する糖鎖の多い糖鎖タンパク質からより早く糖鎖を遊離すると考えられる変異酵素が得られた。また、インバースPCRによって同遺伝子に欠失変異を導入し、様々な欠失を導入した酵素の発現系を構築することができた。これらの変異酵素の構造と特異性の解析から酵素分子の機能領域を明らかにすることが可能となった。
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