嫌気環境下でベンゼンがどのように生物学的に分解・代謝されるかは未だ解明されていない。本研究では嫌気ベンゼン分解菌Azoarcus sp.DN11株を使用して嫌気ベンゼン分解経路の解明、および分解系遺伝子の解析を行うことを目的としている。嫌気ベンゼン分解が起きているDN11株培養上清をGC-MSで解析したところ、benzylsuccinateと安息香酸が検出された。Benzylsuccinateおよび安息香酸は嫌気トルエン分解の中間代謝産物であることから、DN11株の嫌気ベンゼン分解経路はベンゼンのメチル化によりトルエンが生成される経路であることが示唆された。そこでDN11株のゲノム配列からメチル化遺伝子と推測される12遺伝子を大腸菌で発現させ、ベンゼン→トルエン変換を調べたが再現性の高いデーターは得られなかった。次いで嫌気ベンゼン分解に伴い発現誘導を受ける遺伝子を検出するために、cDNA subtraction及びSubstrate-induced Gene Expression (SIGEX)法を行った。嫌気条件下でベンゼンまたは安息香酸で培養したDN11株からRNAを抽出し、cDNAを合成、subtractionを行ったが目的の遺伝子はまだ得られていない。SIGEX法ではGreen Fluorescence protein (GFP)発現ベクターを利用してDN11株のゲノムDNAライブラリーを作成し、ベンゼン、トルエン、安息香酸を加えた時にGFPを発現する大腸菌をフローサイトメーターでソーティングしたところ、1mM安息香酸または10μMベンゼンに反応してGFPが発現する大腸菌をそれぞれ数個得た。現在クローンの解析を進めている。また、GFP発現誘導を受けるクローンの割合が低いことから、ゲノムライブラリーの再構築、発現誘導時の基質濃度の最適化を目指しているところである。
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