研究概要 |
この年度では安定化剤を用いた不安定タンパク質の再生効率の向上に焦点を絞って研究を進めた。基本的には申請者が既に確立している、8M尿素から徐々に尿素濃度を薄めてゆく、透析法を土台として、研究を行った。 不安定なタンパク質としてはニワトリ卵白リゾチーム(HEL)の4個あるSS結合の一番外側のSS結合(Cys6-Cys127)1個だけを切断してカルボキシメチル化した6,127CM-HELを調製して用いた。この誘導体はHELに比べて24度も変性移転温度が低下しており、7.2kcal/molも不安定になっている。 尿素濃度の低下に応じて、安定化剤濃度が上昇するような工夫を取り入れ、種々安定化剤を用いてその効果を検討した。可溶化剤として8M尿素または5Mグアニジン塩酸塩を用い、安定化剤として種々濃度のグリセリン、蔗糖、サルコシン、硫安、アルギニン等で検討した。現在までの結果では、可溶化剤として8M尿素を用い安定化剤としてグリセリン(40%)を用いたときに最も良い再生率の60%を得た。この値は安定化剤を用いないときの再生率の30%に比べて格段の向上である。かくして、かなり不安定なタンパク質を高濃度(2.5mg/mL)で効率よく再生する方法が確立できた。これまでの結果をまとめて報告した[Refolding of an unstable lysozyme by gradient removal of a solubilizer and gradient addition of a stabilizer.J.Biochemistry, 143, 427-431 (2010)]。 現在は、更なる高収率再生を求めて、再生初期構造に影響を与える諸条件を検討する研究を推し進めている。
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