研究概要 |
私達が見出した糖鎖を認識するF-box蛋白質Fbs1及びFbs2は、構造が異常な蛋白質を分解に導く小胞体関連分解機構に於いて働くユビキチンリガーゼを構成する基質認識サブユニットである。これらは異常蛋白質の糖鎖を認識するものである。一方、Fbs1,2と相同性の高いF-box蛋白質Fbxo44はFbs1,2と異なり糖鎖結合能を持っていないためその機能解析を行うために基質のスクリーニングを行った。その結果、Fbxo44は小胞体に存在する糖蛋白質CPVLを基質とすることが判明した。詳細にFbxo44のCPVLの認識機構を検討した結果、Fbxo44は細胞質に存在する糖鎖除去酵素PNGaseと複合体を形成しており、小胞体から細胞質へ戻されたCPVLの糖鎖がPNGaseによりはずされたものを選択的に認識してユビキチン化する可能性が高いことが判明した。これまで、異常糖蛋白質がプロテアソームにより分解を受ける際、糖鎖の除去とユビキチン化がどのような順序で起きるのかはっきりしていなかった。今回の実験に於いて、Fbs1やFbs2によるユビキチン化が糖鎖除去に先行するのに対し、Fbxo44によるユビキチン化はPNGaseによる糖鎖除去の後に起こることが示唆された。小胞体関連におけるユビキーチン化はこれまでHrd1やDoa10など酵母からヒトまで保存されたリガーゼが担っていると考えられてきたが、哺乳類に於いてはこのようにさらに多くの複雑な経路が存在することがわかってきた。
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