研究概要 |
我々の考案した発芽抑制試験を生物検定法として用い、スイカ果実の抽出物由来の果実内発芽抑制物質の単離、ならびに果実内での含有濃度を明らかとしてきた。本研究により、スイカ果実内での種子発芽抑制因子がアブシシン酸およびアブシシン酸グルコースエステルであることを明らかとし、果実内で存在する濃度で十分に発芽を抑制する事を示した(Yoshiki KOBAYASHI,Kensuke NABETA and Hideyuki MATSUURA,Chemical Inhibitors of Viviparous Germination in the Fruit of Watermelon,Plant Cell Physiology, 51,1594-1598,2010)。本生物現象の普遍性を明らかとするために実験植物としてトマト、キュウリを用い、さらに検討を加えた。両植物果実におけるアブシシン酸およびアブシシン酸グルコースエステルの含有量をUPLC MS/MSを用いたSRM法により決定した。しかしながら、トマト、キュウリにおいてはスイカで得られた知見と異なり、果実内で起こりうる濃度では両化合物は発芽を抑制する事はできなかった。よって、他の因子が関与したトマト、キュウリ果実内での種子発芽抑制が示唆された。本件に関しては最終年度における解明事項として位置づけ、研究を進める。また、アブシシン酸グルコースエステルは活性体であるか生理活性物質の貯蔵体であるか議論の分かれるところであるがアブシシン酸グルコースエステルをアブシシン酸に戻すことのできない植物の変異体をもちいて、上記の議論に一石を投じたいと考えている。
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