(1)ヒメツリガネゴケのジャスモン酸(JA)の定量分析とその生合成誘導条件の検討 これまでUPLC-MS/MSを用いたJAを含む植物ホルモンの定量には、分析機器の特性を生かし、5分間という短時間で分析を行っていたが、溶媒のアセトニトリルのグラジエントを緩やかにさせ分析時間を20分としたところ、ジャスモン酸と保持時間が近い不純物のピークをきれいに分離することが出来た。新たな分析条件で、種々の環境ストレスを与えたヒメツリガネゴケのJAを分析したが、その誘導条件を見つける事は出来なかった。 (2)JA処理したヒメツリガネゴケのタンパク質のプロテオーム解析 100μMのJAで処理し生育させたヒメツリガネゴケおよび無処理のヒメツリガネゴケからタンパク質を抽出し2次元電気泳動で分析し、それらのタンパク質の発現パターンを比較した。その結果、JAで処理することにより発現量が異なったタンパク質のスポットが数種確認された。 (3)ジャスモン酸生合成酵素アレンオキシドシクラーゼ(PpAOC3)の機能解析 PpAOC1及びPpAOC2は他の研究グループにより葉緑体局在性が確認された。我々は、これらとは異なるアレンオキシドシクラーゼであるPpAOC3を見出した。本タンパク質もAOC活性を有していた。PpAOC3のGFP融合タンパク質をヒメツリガネゴケのプロトプラストで一過的に発現させたところ、PpAOC3も他のPpAOCと同様に葉緑体局在性が明らかなった。また、PpAOC3は他のPpAOCとは異なり、ガメトフォアよりプロトネマにおいて優位に発現していた。従ってPpAOC3は他のPpAOCとは異なる機能を有することが推定された。
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