1)ヒメツリガネゴケの12-phytodienoic acid (OPDA)還元酵素(PpOPR)のクローニングとその酵素学的諸性質の解明 OPRにはジャスモン酸生合成に関与しているI型OPRとジャスモン酸生合成に関与するII型OPRの二つに大別できる。ヒメツリガネゴケの7種のOPR遺伝子(PpOPR1~PpOPR7)からアミノ酸配列を推定し比較した。それをもとに、I型OPRであるPpOPR1とII型OPRであるPpOPR3及びPpOPR6の三種のタンパク質をコードする遺伝子をクローニングし、組換えタンパク質を得た。PpOPR1はI型OPR活性を有していた。PpOPR6はII型OPR活性を示したが、PpOPR3はほとんど酵素活性を示さなかった。また、ヒメツリガネゴケのPpOPR3とPpOPR6の過剰発現株をそれぞれ作製したところ、いずれもOPDA濃度は減少しており、両遺伝子は生体内で機能していることが示された。PpOPR3過剰発現株は野生株に比べ生育が阻害されていた。PpOPR3のin vitroにおける活性は確認できなかったが生育に影響を与えていることが示唆された。 2)ヒメツリガネゴケのアレンオキシドシンターゼ遺伝子(PpAOS)欠損株の作製および表現型の観察 ヒメツリガネゴケにOPDAを処理したところ、その生育が阻害されたが、ジャスモン酸を処理しても大きな変化は認められなかった。そこで、PpAOS1及びPpAOS2二重欠損株を作製し、その生体内OPDA濃度を測定した結果、その濃度が著しく減少していた。しかし、本欠損株と野生株の表現型に大きな違いは無かった。OPDA処理によるPpAOS遺伝子発現の増加より、OPDAによる正のフィードバック制御機構の存在が示された。両PpAOSは高等植物のAOSと同様に葉緑体に局在することが明らかにされた。
|