研究課題
植物が光の方向に屈曲・運動する"光屈性"は、植物の環境応答反応の代表的な生物機能である。植物の茎が光屈性刺激(横方向からの青色光照射)を感受すると植物成長ホルモン・オーキシンが光側から影側組織へ横移動することで偏差成長が生じ、影側組織の成長が促進された結果、屈曲が起きるという説(1937年)が定説とされてきた。しかしその後、光屈性の誘導はオーキシンの偏差分布ではなく、光側組織で新たに生成した成長抑制物質による光側組織の成長抑制に起因するというモデルが詳細な機器分析等により提唱された。アブラナ科植物において、その成長拗制物質生成のカギとなっているのがミロシナーゼーグルコシノレート・システムである。これまでの研究から、植物の代表的な環境応答である光屈性において、グルコシノレートの代謝物由来の成長抑制物質の生成が光照射側組織で誘導されることが明らかにされた。今年度も引き続きダイコン芽生えを材料にして、光屈性刺激によって誘導される光照射側の成長抑制の原因の一つとして考えられている細胞の一時的な硬直化(cell wall stiffness)についての詳細な検討を行った。グルコシノレートのアグリコンである4-MTBIおよびその代謝物であるラファヌサニンを芽生えに直接投与して、過酸化水素(H_2O_2)およびリグニンのカイネティクスを観察した。実験方法は従来の過酸化水素(H_2O_2)の場合はTissue printing法、リグニンの場合はフロログルシノール塩酸による染色後、顕微鏡観察を行った。片側からの4-MTBIおよびラファヌサニン投与によって過酸化水素(H_2O_2)およびリグニンの蓄積が観察された。また、その蓄積は濃度依存的であった。今後はミロシナーゼ欠損株を用いて光屈性刺激に対する応答性を検討することで、光屈性反応におけるミロシナーゼの役割を解明する予定である。
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Molecular Plant-Microbe Interactions
巻: 24 ページ: 519-532