研究概要 |
ユニークな阻害選択性を有するβ-N-アセチルグルコサミニダーゼ(β-GlcNAcase)阻害剤であるTMG-chitotriomycinを用いて,β-GlcNAcaseの基質特異性・基質親和性に基づく分類を迅速に行なう可能性を探るとともに,本阻害剤の阻害選択性のメカニズムに関する知見を得ることを目的として研究を行なった。第1段階としてTMG-chitotriomycinの各種β-ClcNAcaseに対する阻害の有無を調べ,触媒反応機構を反映するとされる糖質加水分解酵素ファミリーにおける分類と一致するか検討を行った。その結果,同じfamily20に属するβ-GlcNAcaseであっても,TMG-chitotriomycinによる阻害を受けるものと受けないものがあることが明らかとなり,本化合物の阻害選択性は触媒反応機構だけによるものではないという結論を得た。第2段階として,TMG-chitotriomycinによる阻害が,β-GlcNAcaseの基質特異性と関連する可能性を探るため,family20に属するβ-GlcNAcaseの中から,TMG-chitotriomycinに阻害を受ける酵素と阻害を受けない酵素を2種類ずつ選び出し,それらの酵素の基質特異性を調べた。重合度1~3のキチンオリゴ糖のp-ニトロフェニル誘導体を基質とし,p-ニトロフェノール(pNP)の遊離率を酵素反応進行の指標として評価したところ,TMG-chitotriomycin阻害を受ける酵素は,阻害をうけない酵素に比べて,重合度2あるいは3のキチンオリゴ糖誘導体からのpNP遊離率がはるかに高かった。このことから,TMG-chitotriomycinの阻害特異性は,β-GlcNAcaseの基質特異性,なかでも基質鎖長認識機構に基づく可能性が強く示唆された。
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