研究概要 |
今年度はβ-N-アセチルグルコサミニダーゼ(β-GlcNAcase)における,TMG-chitotriomycin阻害感受性と糖質加水分解酵素ファミリー(GHファミリー)における分類との関係について,さらに詳細に検討を行った。まずは既知のβ-GlcNAcase阻害剤であるPUGNACとNAG-thiazolineを用いて,β-GlcNAcaseのGHファミリー分類を試みた。PUGNACは市販品を用いたが,市販品の入手が困難なNAG-thiazolineについては過去の報告に従って合成を試み,反応条件および精製条件の検討の結果,合成品の調製に成功した。14種類のβ-GlcNAcaseについて,PUGNACとNAG-thiazolineによる阻害の有無を調べて検討を行ったところ,13種類はGH20に,1種類はGH3に属するという結果が得られた。これらの酵素について,THG-chitotriomycinによる阻害の有無を調べたところ,PUGNACおよびNAG-thiazolineがGH20の酵素すべてを阻害したのに対し,THG-chitotriomycinはGH20の酵素であっても阻害するものと阻害しないものがあることが確認された。今回用いた酵素の生体内機能についての報告と,それらの酵素のTMG-chitotriomycin阻害感受性との相関関係から.TMG-chitotriomycinは生体内においてキトオリゴ糖を基質とするβ-GlcNAcaseを阻害する一方,糖鎖などキトオリゴ糖以外の物質を基質とするβ-GlcNAcaseに対しては阻害活性を示さないと推察された。このことは,TMG-chitotriomycinの阻害特異性がβ-GlcNAcaseの基折認識に基づくことを示した昨年度の結果によっても支持される
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