研究概要 |
昨年度の研究結果において、TMG-chitotriomycinはPUGNAc・NAG-thiazolineといった既知のGlcNAcase阻害剤とは明らかに異なる阻害選択性を示すという結果が得られた。その阻害選択性には酵素の基質特異性が大きく関与するのではないかと考えられたことから、今年度はTMG-chitotriomycin感受性酵素とTMG-chitotriomycin非感受性酵素それぞれの基質特異性を中心に検討を行った。その結果、TMG-chitotriomycin感受性酵素は、キトオリゴ糖およびその誘導体を分解し、枝分かれのある複合型糖鎖の中核構造GnGnのピリジルアミノ化誘導体であるGnGn-PAを分解しなかった。一方、TMG-chitotriomycin非感受性酵素は、キトオリゴ糖およびその誘導体を分解せず、GnGn-PAのみを分解した。このように,酵素のTMG-chitotriomycin感受性と基質特異性との間には明確な相関関係があることが明らかとなり、TMG-chitotriomycinによるGlcNAcase酵素の分類が可能であることが示された。さらに、関連する他の研究結果と併せてGlcNAcaseの生理的機能の面から考えると、TMG-chitotriomycin感受性酵素はキチン分解に寄与して生体維持や栄養獲得に関わる酵素であり、TMG-chitotriomycin非感受性酵素は,N-グリカンプロセシングや糖脂質分解に寄与する酵素と考えられる。これらのことから、TMG-chitotriomycinはGlcNAcaseの生理的機能を分類するツールとしても利用できる可能性があると考えられる。
|