研究概要 |
ネオエキヌリンAは、培養神経系細胞において、活性窒素によって誘導される細胞死、さらにはパーキンソン病(PD)誘導神経毒1-methyl-4-phenylpyridinium(MPP^+)によって誘導される細胞死に対して耐性を付与する。ロテノンはMPP^+と同様に実験動物にPD様の病態を誘導する。また、MPP^+と同様、ミトコンドリア電子伝達系complex Iを阻害するが、MPP^+よりも特異性が高い。ロテノン誘導細胞死ではミトコンドリアによるATP産生停止が寄与する。そこで、MPP^+より作用点がよくわかっているロテノンを用い、これによって誘導される細胞死に対して、ネオエキヌリンAが保護効果を有するか調べた。その結果、ネオエキヌリンAはロテノン誘導細胞死に対しても保護効果を有することが判明した。ロテノンによるミトコンドリア傷害により解糖系におけるATP産生は亢進したが、ネオエキヌリンAはここには全く影響を与えないことが判明した。しかし、細胞のATP総量はネオエキヌリンAにより低下することが判明した。これは、ネオエキヌリンAにより、ATPの消費に依存した細胞保護機構が活性化されている可能性を示唆する(Akashi et al.,2011)。今後はこの保護機構の解明を行う。 アルツハイマー病(AD)脳の特徴として、神経細胞死に先立ち、細胞内にタウタンパク質が不溶化して沈着する。ネオエキヌリンAのAD治療薬としての可能性を探るため、神経系培養細胞にタウの不溶化を誘導する条件の検討を行った。その結果、病的レベルの一酸化窒素を少なくとも4日細胞に曝露することにより、タウが不溶化することを世界で初めて見出した(Takahashi et al., Reain Research, submitted)。今後はこのADモデル細胞を用いて、ネオエキヌリンAの有効性を検討する。
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