研究課題
ネオエキヌリンAは、12時間以上共培養することにより、PC12細胞に活性窒素傷害に対する耐性を賦与する。ネオエキヌリンA処理よる細胞の変化を調べた結果、ライゼートレベルでは、解糖系・クレブス回路の個々の酵素活性に変化はなく、また、NAD(P)H含量にも変化はなかった。しかし、生細胞レベルにおいてNAD(P)Hを、フェナジン触媒下で細胞外テトラゾリウムによって酸化した場合、再還元活性が1.5倍程度上昇することが判明した。構造類自体であるプレエキヌリンには、この効果のみならず細胞耐性賦与活性も見られない。以上の結果より、ネオエキヌリンAによる活性窒素耐性賦与には、NAD(P)H産生の潜在能力(reserve capacity)の亢進に基づいていることが判明した。活性窒素は細胞内タンパク質のチオール基(-SH)をニトロソ化する(-SNO)。しかしこの反応機序については混沌としている。一酸化窒素(NO)ドナーならびにニトロソ化システイン(CysNO)などを用いて探究した結果、ニトロソ化は培地成分により影響を受けることが判明した。生理食塩水中などでは、CysNOがアミノ酸トランスポーターを介して取り込まれることが必要であるが、通常の細胞培養培地では、基質アミノ酸との競合ならびにアルブミンへのニトロソ基転移反応のため、トランスポーターでの取り込みは起こらないことが示された。本解析により、細胞内タンパク質ニトロソ化に対するネオエキヌリンAの効果の検証が可能となった。アルツハイマー病(AD)では、タウタンパク質が不溶化して細胞内に沈着する。この過程へのNOの関与を調べたところ、病的レベルのNOに細胞を少なくとも4日曝露するとタウが不溶化することを見出した。また、タウ沈着に先行し、過度のニトロソ化、プロテアソーム活性の低下、ならびにミトコンドリアの機能低下が起こることが判明した。本ADモデル系により、ネオエキヌリンAの有効性の検証が可能となった。
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Neuroscience Letters
巻: 510 ページ: 48-52
Oxidative Medicine and Cellular Longevity
巻: 2,011 ページ: Article ID 450317,8
10.1155/2011/450317