前年度の研究で、病原真菌Paracoccidioides brasiliensis症に対する宿主の感染防御能が、低タンパク質食により高められ、逆に高タンパク質食により低下することを明らかにした。そこで本年度は、その原因を明らかにする目的で、食餌性タンパク質が感染のごく初期に誘導される自然免疫反応に与える影響について、P. brasiliensis感染症をモデルに調べた。その結果、低タンパク質食を摂取したマウスの脾臓では、TLR2や樹状細胞・マクロファージ活性化因子の発現が感染初期に速やかに増大し、その後、低下した。一方、高タンパク質食を摂取したマウスの脾臓では、これらの遺伝子の感染初期における発現が、低タンパク質食および標準タンパク質食摂取マウスより少なく、逆に、その後の増加の程度が、大きかった。感染初期の脾臓での自然免疫関連物質の速やかな増大が、低タンパク質食による感染防御能の亢進の一因であること、逆に、これら自然免疫関連物質が感染初期に速やかに産生されないことが、高タンパク質食による感染防御能の低下の一因であることが示唆された。 高タンパク質食による宿主の病原真菌感染防御能の低下が、タンパク質の種類(アミノ酸組成の違い)の影響を受ける可能性について検討した。マウスにカゼイン+DL-メチオニン、大豆タンパク質、小麦グルテンをタンパク質源としてそれぞれ含んだ餌を摂取させ、P. brasiliensisを接種した後、経時的に抗菌活性能および免疫応答を調べた。その結果、高タンパク質食による病原真菌感染防御能の低下の程度は、タンパク質の種類に左右されず、アミノ酸組成の影響は受けないことが示唆された。
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