研究概要 |
膜結合性セリンプロテアーゼ(membrane-type serine protease1,以下MT-SP1)は腸管などの管腔表面を構成する単層上皮細胞に発現する酵素である。単層上皮細胞は細胞外マトリックスで構成される基底膜を足場として接着しているが、我々はMT-SP1が基底膜構成成分を分解する活性があることをみいだしてきている。本研究ではMT-SP1(MT-SP1による基底膜の分解)の単層上皮細胞(特に腸管細胞)の代謝回転(増殖、分化、死滅)における役割を明らかにすることを第一の目的とする。さらにMT-SP1の活性化機構についての知見を拡充するとともに、本酵素の活性化を制御する食品成分の探索を行う.平成21、22年度において正常な腸管細胞のモデル細胞として確立されているIEC-6細胞を用い、その細胞に対するリコンビナントMT-SP1(以下rMT-SP1)の作用を解析した。結果、rMT-SP1がIEC-6細胞の剥離とアポトーシスを引き起こすことを明らかにした。またrMT-SP1によるIEC-6細胞の剥離が一部マトリックスプロテアーゼ2によって仲介されることを明らかにした。また腎尿細管上皮細胞のモデル細胞であるMadin-Darby canine kidney cellsに対してもrMT-SP1が剥離とアポトーシスを起こすことを明らかにした。さらに、一本鎖のMT-SP1(MT-SP1チモーゲン)にinherent activityがあること、MT-SP1チモーゲン活性が塩化ナトリウム存在下で阻害されることを明らかにした。
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