研究概要 |
近年,高齢化社会が急速に進むに伴い,アルツハイマー病をはじめとする認知症の脳神経疾患の罹患者も増加の一途を辿っているが,現在その治療法又は予防法の開発が待たれている.先に,脳神経賦活作用を有する天然物の探索研究の一環として,ポリフェノール成分のカテキン類やキサントン類,さらにはChlorogenic acidおよびその生体内代謝産物のm-Coumaric acidなどが,ラット胎仔海馬の初代培養神経細胞を用いた神経突起伸展作用を有することを見出し,報告している.本年度は,神経突起伸展作用を示したポリフェノール類が,経口投与後に脳内に移行するかを評価するために,活性成分の中でもCatgchin投与後の脳内移行に関する基礎的検討を行った. SD系雄性ラットにCatechinを経口投与し,1,3,6,12時間後に全採血を行い,続いて全脳を摘出した.摘出した脳はメタノールでホモジナイズを行い,β-glucuronidaseおよびsulfatase処理後,酢酸エチルにより抽出し,分析サンプルとした.得られた血漿および脳サンプルは,HPLC-ESI-MS/MSにより分析を行った.その結果,投与後1時間から,血漿中にはCatechinおよびその生体内代謝産物である3'-0-Methylcatechinが検出され,ラットにおいてCatechinは,経口投与後,吸収されて,その生体内代謝物産物の3'-0-Methylcatechinと共に血中に存在することが明らかとなった.一方,脳ではいずれの時間においてもCatechinの存在は確認できなかったが,投与後1時間において,3'-0-Methyl-catechinが検出されたことから,Catechinの脳神経賦活作用においては,その生体内代謝産物も含めた活性評価を行う必要性が示された. さらにキサントン誘導体高含有のマンゴスチンに着目し,脳神経賦活作用を有する更なる天然物を探索する目的で成分研究を行った.マンゴスチンのメタノールエキスを各種カラムクロマトグラフィーにより分離,精製を行い,2種の化合物を単離し,それぞれNMRおよびMSスペクトルの解析結果からα-Mangostinおよびγ-Mangostinと同定した.脳神経賦活作用などの各種活性試験に供試できるキサントン化合物を得ることができた.
|