研究概要 |
脳神経賦活作用を有する天然物の探索研究の一環として,先にポリフェノール成分のカテキン類やキサントン類などが,ラット胎仔海馬の初代培養神経細胞を用いた神経突起伸展作用を有することを見出し,報告している。さらに本研究では,神経突起伸展作用を示したカテキン類が,経口投与後に脳内に移行するかを評価するために,活性成分の中でもCatechin投与後の脳内移行に関する基礎的検討を行い,脳内に3'-0-Methylcatechinが存在することを示唆するデータを得た。さらの摘出脳の抽出方法について再検討した結果,従来の固相抽出法よりも溶媒抽出法の方が,感度良く分析できることが判明したため,Catechinの経口投与後の脳内移行について,後者の抽出法によるHPLC-ESI-MS/MS法の再検討を行った。その結果,経口摂取されたCatechinは,血中では未変化体のCatechinとともに,3'-0-Methylcatechinが血中に存在することが明らかとなった。さらに脳内においては3'-0-Methylcatechinのみが検出された。従って,Catechin経口摂取後に,代謝物のみが脳内に移行することが明らかになったことから,脳神経賦活作用においては,その生体内代謝産物も含めた活性評価を行う必要性が示された。一方,脳神経突起伸展作用を示したキサントン誘導体を多く含むマンゴスチンのキサントン誘導体について活性評価を行うために,昨年度に続き,マンゴスチンのメタノールエキスについて各種カラムクロマトグラフィーにより分離,精製を行い,さらに3種の既知キサントン誘導体などを単離し,それぞれNMRおよびMSスペクトルの解析結果から同定した。単離した化合物については,今後脳神経賦活作用などの各種活性試験を行う予定である。
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