日本のアレルギー罹患率は近年増加傾向にあるが、アレルギー性疾患の症状を軽減する対策の一つとしてアレルギー抑制成分を含む食品の摂取が注目され、多くの研究が行われている。一方、アレルギー性疾患の症状を悪化させる物質についてはその存在が予見されているが、これまでのところその特定には至ってない。本研究の目的は、活性酸素による生体内脂質過酸化がアレルギー性疾患にどのような影響を及ぼすかを調べることである。 1)アレルギー促進物質の評価法の確立 我々は、マスト細胞によるアレルギー反応モデルとして、樹立細胞株RBL-2H3(ラット好塩基球由来)およびPB-3c(マウス骨髄由来)を用いてきた。アレルギー反応においてRBL-2H3およびPB-3cが放出するケミカルメディエーターは、主にヒスタミンおよびロイコトリエンB_4であるが、これまで高感度かつ再現性良くHPLCで定量する方法はなかった。そこで、細胞の刺激とケミカルメディエーター放出の条件を検討し、新たに逆相HPLCによる定量法を確立した。 2)過酸化脂質がアレルギー反応に及ぼす影響 1)で確立した評価法を用いて、リノール酸過酸化物およびその分解物(4-ヒドロキシ-2-ノネナール)が、アレルギー反応に及ぼす影響を調べたところ、細胞毒性を示さない濃度で有意な促進効果が認められた。また、リノール酸過酸化物を還元したものではアレルギー促進効果は認められなかった。これらの結果から、生体内脂質過酸化がアレルギー反応を増悪させる可能性が示唆された。
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