日本のアレルギー罹患率は近年増加傾向にあるが、アレルギー性疾患の症状を軽減する対策の一つとしてアレルギー抑制成分を含む食品の摂取が注目され、多くの研究が行われている。一方、アレルギー性疾患の症状を悪化させる物質についてはその存在が予見されているが、これまでのところその特定には至ってない。本研究の目的は、活性酸素による生体内脂質過酸化がアレルギー性疾患にどのような影響を及ぼすかを調べることである。 1) IgE感作によるアレルギー促進物質の評価法の確立 平成21年度は、樹立細胞株RBL-2H3(ラット好塩基球由来)およびPB-3c(マウス骨髄由来)をマスト細胞として用い、カルシウムイオノフォア刺激による評価方法を検討した。22年度は、RBL-2H3を用いてIgE感作刺激によって放出されるヒスタミンを測定することによる評価法を検討した。その結果、最適な抗原および抗体濃度が決定されるとともに、エタノール濃度が大きく影響することが明らかとなった。本法は、カルシウムイオノフォア刺激よりも生理的条件に近く、抑制メカニズムの解明に有用である。 2) 4-ヒドロキシ-2-ノネナールがアレルギー反応に及ぼす影響 21年度の結果から、炎症反応にも関与する4-ヒドロキシ-2-ノネナールのアレルギー促進作用が強いことが明らかになったため、22年度は1)で確立した方法を用いて評価を行った。その結果、カルシウムイオノフォア刺激の場合と同様に、4-ヒドロキシ-2-ノネナールはアレルギー反応を促進する傾向が認められ、過酸化脂質分解物がアレルギー反応を増悪させる可能性が示唆された。
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