日本のアレルギー罹患率は近年増加傾向にあるが、アレルギー性疾患の症状を軽減する対策の一つとしてアレルギー抑制成分を含む食品の摂取が注目され、多くの研究が行われている。一方、アレルギー性疾患の症状を悪化させる物質についてはその存在が予見されているが、これまでのところその特定には至ってない。本研究の目的は、活性酸素による生体内脂質過酸化がアレルギー性疾患にどのような影響を及ぼすかを調べることである。 1)過酸化脂質がアレルギー反応に及ぼす影響 21-22年度の結果から、13-ヒドロペルオキシリノール酸(13-HPODE)および4-ヒドロキシ-2-ノネナール(HNE)は、ヒスタミン放出促進作用を示すことが明らかになった。そこで23年度はもう一つのケミカルメディエーターであるロイコトリエン(LT)の放出に対する13-HPODEおよびHNEの影響をマウス骨髄由来マスト細胞を用いて調べた。その結果、13-HPODEおよびHNEともにLTB4放出に対して影響を及ぼさないことが明らかとなった。 2)HNEがマスト細胞のヒスタミン放出におけるシグナル伝達に及ぼす影響 22年度に認められたHNEのアレルギー促進作用のメカニズムを明らかにするため、シグナル伝達に及ぼす影響をウエスタン解析で調べた。マスト細胞としてラット好塩基球由来細胞を用い、IgE感作によって刺激することでヒスタミン放出を誘導した。その結果、比較的上流のシグナル伝達物質であるSykのリン酸化を促進している可能性が示唆された。
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