研究概要 |
平成22年度は3年計画の2年目である.本研究では,遊離のCoA, CoAの直接の前駆体であるデホスホCoA,様々な代謝の鍵物質であるアセチルCoAの同時定量法の開発を行うことを目的とした.また,開発した同時定量方法の応用としてパントテン酸欠乏食によって弛緩性便秘を引き起こしたラットの大腸中CoA濃度の変化を明らかにすることを目的とした. HPLCをいたCoA,デホスホCoA,アセチルCoAの簡便な同時定量法を開発 Demozら(J chromatogr B 1995)のアシルCoA測定方法をベースに,溶出システム,カラム,検出波長,流速,移動相の有機溶媒濃度,カラム温度を検討し,分離能が高くて機器に負担をかけない測定条件を定めた.アイソクラティックシステムを用い,6%の有機溶媒を含む単一移動相を流速1.0ml/分で流すことで,CoA,デホスホCoA,アセチルCoA,の分離・定量に成功した. 弛緩性便秘と大腸CoA濃度の関係 3週齢のWistar系雄ラットをパントテン酸不含食群と摂食量を不含食群に合わせた対照群にわけ,16週間飼育した.弛緩性便秘(食物通過時間の遅延)がみとめられた時点で解剖し,大腸中のCoA,デホスホCoA,アセチルCoAならびに筋収縮を促進するアセチルコリンとセロトニンを測定した.パントテン酸不含食群に便秘の症状が現れ,大腸中アセチルCoAの値が低かった.アセチルコリンは有意ではないが減少していると考えられ,セロトニンに変化はみられなかった.これは「パントテン酸不含食によって大腸中のアセチルCoAが減少し,それに伴いアセチルコリンが減少し,大腸の機能低下につながった」という考えを支持するものであった.
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