食物アレルギーは今なお深刻な社会的な問題となっている。明らかにされるアレルゲンの数は増大しているとともに、アレルゲン、とりわけ植物におけるアレルゲンはより複雑化している。しかし、近年、ラテックス・フルーツシンドロームなどの研究により、複雑な様相を呈している植物性アレルゲンは共通抗原性という概念のもとに幾つかのグループに分類される傾向にある。植物アレルゲンにおけるアスパラギン結合型糖鎖が上述の共通抗原の一つとして働く可能性を示す報告が近年数多くなされている。しかしながら、その根拠はすべて間接的なもので、糖鎖とIgE抗体との結合性を直接的に立証したものではない。そのため、その糖鎖のどのような構造がIgE抗体との結合において必須であるかについては未解明である。この課題の解決は、臨床診断において誤診の防止に役立つのみならず、治療に有益な知見を提供するものである。本年度は、以下の成果を得た。 1) 昨年度得られたアレルゲンをトリプシンなどにより限定水解して糖鎖を保持した糖ペプチドを単離・精製した。 2) 1)上述1)で得られた糖ペプチドをリガンドとし、これをニトロセルロース膜またはBrCN活性化Sepharose 4Bに固定化して、これを用いて、大量の患者血清から特異的なIgE抗体を精製し、来年度に予定している糖鎖との反応性の検討の準備を行った。 3) タバコ細胞での発現を行うために、発現系を構築し、タバコ培養細胞に形質転換し、目的とするタンパク質の発言を試みた。その結果、目的とするタンパク質の発現に成功した。発現したタンパク質の性状について、来年度検討する予定である。
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