研究概要 |
本研究は、長鎖アシル基を部分構造に持つカプサイシン類縁体(Long-chain N-vanillyl acylamide,LCNVA)が食品中に存在することを明らかにし、また、その生成メカニズムを解明することを目的としている。N-バニリルアシルアミド類(NVAs)には、天然の辛味関連成分としてトウガラシ果実に含まれるカプサイシンを主成分とするカプサイシノイドがある。NVAsのアシル基が長鎖(long chain)であるLCNVAsは、辛味のない非天然型のカプサイシン様生理活性物質として開発されてきた。平成21年度に実施した研究で私達は、トウガラシオレオレジン中に6種のLCNVAを見出し、各種スペクトルデータおよび標準物質との比較により、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸をそれぞれのアシル基とする、myrvanil、palvanil、stevanil、olvanil、livanil、linvanilと同定した。トウガラシオレオレジン3種とトウガラシ果実2種中のLCWAs含量をLC-MS/MSにより定量した結果、含有カプサイシンに対する総LCNVAsの相対含有率は、オレオレジンが最大で41%であるのに対し、トウガラシ果実では0.01%以下であった。また、オレオレジンにおいて、myrvanilを除く5種のLCNVA間の含有比率は、オレオレジンの大部分を占める油画分の脂肪酸組成と酷似していた。以上のことから、LCNVAsはトウガラシ果実には元来含まれておらず、オレオレジンへの加工過程あるいはその貯蔵過程で油画分の脂肪酸を原料として生成することが示唆された。
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