研究課題
本研究は、長鎖アシル基を部分構造に持つカプサイシン類縁体(Long-chain N-vanillyl acylamide,LCNVA)が食品中に存在することを明らかにし、また、その生成メカニズムを解明することを目的としている。平成22年度までに、食品素材であるトウガラシオレオレジンからolvanilを含む6種のLCNVAを単離同定した。そして、これらLCNVAがオレオレジンの加工過程で生成していることを示唆する結果を得た。平成23年度では引き続き、LCNVAの生成メカニズムをモデル反応を用いて解明することを目的とした。反応出発物としてカプサイシンもしくはバニリルアミンと、トリアシルグリセリドを混合して、様々な条件下におけるLCNVAの生成量を調べた。その結果、バニリルアミンを出発物として用いた場合に高いLCNVA生成率が得られた。また、出発物の初濃度が高いほど、そして反応温度が高いほど、LCNVAの生成率は高値を示した。以上のことから、このLCNVA生成メカニズムは、バニリルアミンとトリアシルグリセリドの求核置換反応であることが示唆された。しかしながら、室温ではLCNVA生成がほとんど進行せず、逆に高温では生成したLCNVAが徐々に分解していた。このことから、トウガラシオレオレジン中に存在していた大量のLCNVAは、求核置換反応とは異なるメカニズムで生成した可能性もある。一方、バニリルアミンはトウガラシ果実に含まれているという報告はあるが、その他の植物では調べられていない。そこで、LCNVAの原料になり得るバニリルアミンを様々な植物から見い出すべく、まず、HPLCでのバニリルアミン特異的な分析条件を検討した。その結果、容離液にバニリルアミンとイオンペアを形成するドデシル硫酸ナトリウムを加えた水-メタノール混合液を用いて逆相系のカラムで分離し、蛍光検出することにより、サンプル中のバニリルアミンを特異的に検出・定量する系を構築した。この系でシシトウ中の数ppmのバニリルアミンを検出・定量することができた。
すべて 2011
すべて 学会発表 (1件)