1.分子量20kDa以下の低分子ペプチド画分を、ラクトフェリン結合タンパク質画分から、分取用イオン交換カラムTSKgel SP-5PWを用いたクロマトグラフィー、限外ろ過膜処理(分画分子量20kDa)、および逆浸透膜処理で回収した。また、逆相カラムXBridge BEH300 C18で分画し、UV220nmで検出した各フラクションに含まれるペプチドのアミノ酸配列を、マイクロシークエンス法で明らかにした。さらに、培養細胞実験に供試するために十分な量のペプチド画分を得るために、上記方法をスケールアップして大量調製を行った。 2.ラクトフェリンに結合していたラクトパーオキシダーゼに、IL-10産生促進作用が確認されたことから、その作用機構を自己免疫疾患モデルマウスの脾臓細胞を用いて解析した。誘導されたIL-10産生細胞は、I型糖尿病発症の引き金になるグルタミン酸デカルボキシラーゼに特異的な自己免疫応答を抑えることができた。MACS処理で脾臓細胞からCD4^+T細胞を分離し、同様に実験に供した結果、IL-10産生促進作用にはT細胞のみが関与するわけではないことが明らかとなった。 3.鶏卵アレルゲンである卵白アルブミンに特異的なT細胞増殖応答を、BALB/c系マウスの脾臓細胞および脾臓由来CD4^+T細胞で調べたところ、ラクトパーオキシダーゼが濃度依存的に抑制することが明らかになった。また、卵白アルブミンに特異的なIgE抗体遺伝子を、BALB/cマウスにトランスジェニックしたモデル動物においても、ラクトパーオキシダーゼの抑制作用が明らかになった。これらの結果から、ラクトパーオキシダーゼが鶏卵アレルギーの予防や、その症状の緩和に有効である可能性が示唆された。
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