限外ろ過膜および逆浸透膜で処理したラクトフェリン結合タンパク質画分から、逆相カラムXBridge BEH300 C18および陽イオン交換カラムSP-5PWを用いた高速液体クロマトグラフィーで、28種類のペプチドおよびタンパク質を分離精製した。その中から、活性化T細胞の抑制作用を示したペプチド成分2種類について、LC/MS/MSとマイクロシークエンス法で構造解析を行い、分子量とアミノ酸配列を明らかにした。また、Fmoc法によりペプチドの化学合成を行い、分離精製物および合成物の作用特性を比較した。さらに、動物実験で免疫調節作用が評価できる量のラクトフェリン、ラクトパーオキシダーゼ、アンジオジェニンおよびシスタチンCを単離精製し、in vivoにおける各種評価を行った。 NOD(Non Obese Diabetes)マウスにおける1型糖尿病発症の引き金になる自己免疫応答の誘導を、ラクトフェリン結合タンパク質画分の中のラクトパーオキシダーゼが抑制できることが明らかとなった。また、鶏卵アレルギーの原因タンパク質である卵白アルブミンに特異的なT細胞応答やIgE応答に及ぼす、ラクトフェリン結合タンパク質の影響を調べた。その結果、卵白アルブミンで免疫したBALB/c系マウスのリンパ節細胞を抗原とともに培養すると、抗原特異的なT細胞応答がラクトパーオキシダーゼの作用により抑制されることが分かった。また、鶏卵アレルギーモデルとして開発された卵白アルブミン-IgEマウスを用いた実験では、脾臓細胞の抗原依存的増殖応答を、ラクトパーオキシダーゼが抑制することが明らかとなった。
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