研究概要 |
ガーリック由来のジアリルトリスルフィドは、各種白血病細胞にアポトーシスを誘導して強力な抗がん作用を示す。これまでにアリルスルフィド類の中でもジアリルトリスルフィドが細胞内の分子標的のシステイン残基と反応して機能する可能性を明らかにしている。そこでシステイン残基が機能制御に重要な役割を担っている分子を中心に分子修飾と機能性について関連付けて解明を試みた。これまでに、レドックス二次元電気泳動によりジアリルトリスルフィドの分子標的候補分子をいくつか見出している。本年度は、これまでに検出・同定されたタンパク質のうち、heat shock protein27(HSP27)の細胞内の発現動態について検討を行った。ヒト単球性白血病細胞U937を2×105cells/mlで播種して24時間前培養した。終濃度20μMのDATSを添加して10分、1,4,8時間後にそれぞれ回収し、Hsp27に対するポリクローナル抗体を用いて検出した。その結果、DATS添加後10分において、Hsp27の二量体の形成が確認された。また、Hsp27の二量体はDATS添加1時間後でも観察されたが、4時間後以降では減少していた。Hsp27は分子内に1つのシステイン残基を有する。これまでにジアリルスルフィドが、βチューブリン、CYP2E1のシステイン残基をS-アリル修飾することによりこれらのタンパク質の機能を改変することを明らかにしたが、Hsp27に対しては、安定なS-アリル誘導体を形成することなく、同分子を酸化的に修飾してダイマーを形成することを明らかにした。さらに現在RNA干渉法を用いてジアリルトリスルフィドによるアポトーシス誘導におけるHSP27の機能について追究している。
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