研究概要 |
本研究は,腸内共生菌による影響を最も受けやすい大腸部位の免疫応答について,腸管免疫系の形成とIgA産生機構における腸内共生菌による修飾機構の解明と,大腸内共生細菌に対する免疫反応の制御機構の解明をめざした. 無菌マウスにマウス腸内共生菌由来のBacteroides acidifaciens strain A43 (BA)とLactobacillus johnsonii 129 (LJ)をそれぞれ単独定着させたノトバイオートマウスを作製した.大腸(盲腸・結腸・直腸)部位の粘膜中総IgA量はBAマウスがLJマウスおよび無菌マウスに比べて有意に高く,小腸粘膜における総IgA量は差が認められなかった.BAマウスの盲腸リンパ節組織では,活性化B細胞が集積する杯中心の形成を示すPNA陽性画分が観察されたのに対し,LJマウスおよび無菌マウスでは観察できなかった.しかし,小腸パイエル板においては無菌マウスにはPNA陽性画分が検出されなかったが,BAおよびLJマウスのいずれも杯中心の形成がみられた.さらに,大腸および小腸粘膜に分泌されるIgAは,それぞれ定着した菌体に対して反応する抗体が誘導されており,特に,LAマウスの小腸粘膜では自身のLA菌体のみならずBA菌体にも反応する特徴がみられた. 以上より,感染防御に重要なIgA産生応答については,腸内共生菌,特にBacteroidesが感染防御に重要なIgA産生を活性化することで,自身の腸管内での菌数をある程度制御すると共に,腸管粘膜に侵入した病原菌などの迅速な排除や適正な腸内共生菌の維持を通して,腸内環境の恒常性に寄与している可能性が考えられた.また,腸内共生菌によって誘導されるIgA産生は腸内共生菌の種によって異なる特性があり,その抗体との親和性は必ずしも高くないことから,腸内共生菌の完全な排除ではなく,腸内共生に寄与しているかもしれない.
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