研究課題
われわれが摂取する食品には病原性微生物が存在することもありうるが、病原体の侵入を阻止して最前線のバリアとして機能しているのが腸管免疫システムである。食品の安全性への関心が高まっている現在、腸管上皮細胞のバリア機能の解明はきわめて重要な課題である。研究代表者は自然免疫における腸管上皮の役割を解明する目的で、これに関与しうる分子として新奇分泌型レクチン(RegIV)を見いだしている。さらに、RegIVがマンナンへの結合性を有すること、グラム陽性菌、グラム陰性菌、および真菌に対して抗菌性を示すことを初めて明らかにしている。これらのことからRegIVは、幅広い微生物に対して抗菌作用を示し、感染防御や腸内フローラ制御に重要な役割を担うユニークなレクチンであることが示唆された。このような背景から、本基盤研究においてはRegIVの抗菌作用機構の解明、内分泌因子としての機能の解明を主たる目的として解析を行った。本年度は、RegIVの抗菌作用機構を解明するために解析を行った。前年度までに発現系を確立したヒトRegIV組み換えタンパク質を用い、真菌であるCandida tropicalisに対する抗菌作用を検討したところ、RegIVはC. tropicalisに対して強い抗菌性を示すものの、その膜構造には大きな変化をおよぼさないことが電子顕微鏡観察から明らかとなった。また、RegIVを作用させても、菌内にあらかじめ取り込ませた蛍光物質の漏出は見られなかった。これは前年度明らかにした大腸菌へのRegIVの作用、すなわちリポ多糖への結合を介して膜構造変化を与える作用とはまったく異なるものである。これらのことから、RegIVは異なる機構により感染微生物に作用し、抗菌性を発揮することが示唆された。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 74 ページ: 2524-2526