初年度は、培養MIN6細胞(マウス膵臓ランゲルハンス島ベータ細胞)を用い、インシュリン分泌パターンの評価方法を確立した。同等な継代数の培養MIN6細胞を用いるとデータの再現性が上昇することを考慮した上で、播種時の細胞数と、培養液交換後のサンプル採取時間の設定等の実験条件を確立した。次に、脂肪酸のインシュリン分泌に与える影響を評価するため、代表的な遊離脂肪酸であるオレイン酸を用いて実験を行った。オレイン酸を培養液中に投与するための溶媒と投与濃度範囲の選定、コントロール群とオレイン酸処理群における培養MIN6細胞からのインシュリン分泌量の差を効率よく検出するためのオレイン酸処理時間の設定、オレイン酸の前処理の有無によりインシュリン分泌量の違いが現れる処理条件の確立等を行った。さらに、飽和脂肪酸(パルミチン酸)と不飽和脂肪酸(リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸)を用い、同様の試験を行った。高グルコース及び低グルコースの培養液で各種脂肪酸のインシュリン分泌調節作用が異なること、脂肪酸の前処理時間を長くすると短時間前処理ではインシュリン分泌促進作用が認められた脂肪酸の反応性が変化する等のデータが得られた。次年度は、インシュリン分泌に促進的に作用する脂肪酸と抑制的に作用する脂肪酸の存在を明らかにし、その作用メカニズムをユビキチンとの関連性に着目して探索する。
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