研究計画にしたがって,屋上緑化木の抗力係数の評価を行った。近年,地球温暖化防止の観点から屋上緑化のために樹木を植栽する例も見受けられるが,強風を受けたときの樹木の倒壊についての安全性については十分に評価されていない。そこで屋上緑化木の抗力係数について,基礎的知見を得るために札幌市内のマンションの屋上で緑化木の抗力係数を測定した。供試木は針葉樹のヨーロッパトウヒと広葉樹のシラカンバの各1本である。また,計測に当たって,長期間,継続してデータを収集できるように太陽電池と自動車用バッテリーを併用した電源システムを構築した。 実験の結果を用いて,各樹種の風速と抗力係数の関係に高い適合度で指数型モデルの回帰曲線をあてはめることができた。これらの回帰式を用いて風害が起きることが予想される風速30m/s時の抗力係数を算出した結果,ヨーロッパトウヒでは0.545と計算された。これは従来の風洞実験で得られている針葉樹の抗力係数より高めの値であった。屋上緑化木では樹高を抑えて管理されていることも抗力係数を大きくしていることの原因と考えられた。一方,シラカンバの風速30m/s時の抗力係数は0.098と評価され,これは平成21年度に報告したポプラ樹の値より小さかった。この供試木は強度に剪定されており,広葉樹の抗力係数低減のために剪定の有効性が示唆された。 以上の結果から緑化樹の抗力係数を簡便に評価する手法を確立できた。ここで得られた抗力係数,平成22年度の研究成果である樹幹の断面形状の非破壊測定,転倒モーメントの評価データを合わせることで,緑化樹の風害危険度の評価が可能である。
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