ニセアカシアの種子繁殖の特性を調べるために、研究地と設定した山形県鶴岡市を流れる一級河川の赤川の河川敷沿いに分布する30個体を選定し、種子採取を行い、休眠種子と非休眠種子の比率を求めたところ、すべての個体が休眠と非休眠の種子を生産していることが確認された。したがって、ニセアカシアは種子異型性を示すと言える。ただし、その生産比率は個体間で大きく異なり、非休眠種子の比率は最低で8%、最大で約60%であった(平均では44%)。これらの比率の個体間順位は翌年も大きく変わらず、両年間で有意な正の相関を示した。したがって、休眠種子あるいは非休眠種子の生産のしやすさは個体の特性と考えられた。個体サイズと非休眠種子生産比率の間には有意な関係はみとめららず、上流に休眠種子を生産する個体が多く、下流に非休眠種子を生産する個体が多い傾向にあることが明らかになった。 土壌に埋めた種子を掘り出し、当年採取種子とヒートショック、変温性、傷付け処理に対する反応を調べた所、ヒートショックおよび変温性に対しては発芽促進効果が示さず、傷付け処理に対して飲み発芽促進効果が認められた。また、これらは埋土させた種子と当年採取種子の間に有意な違いは認められなかった。以上のことから、ニセアカシア種子は土壌中で特性が変化することはなく、物理的攪乱にのみ反応して発芽することが明らかになった。
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