研究概要 |
外来植物であるニセアカシアには一般に知られる休眠種子のほかに、非休眠種子も生産していることを発芽実験により確認した。この非休眠種子は、特別な休眠打破処理を施さなくても発芽するが、野外における更新に貢献しているのか不明であった。そこで、非休眠種子の散布および発芽特性について室内の発芽実験と野外の播種実験を行った。非休眠種子は全散布期間を通じた健全種子中の約半数を占めており、室内実験では15℃以上で発芽できることが明らかになった。野外で播種した場合にも多くの実生の発生が確認されたが、その季節は播種時期によって異なっていた。すなわち,9月と10,月に播種した非休眠種子は当年の秋に発生したのに対し、それ以降に播種したものは翌年の春に発生した。発芽季節が当年と翌年に分離した原因は、11月以降の地温が15℃以下となったため、非休眠種子は休止状態で積雪下において越冬しためと考えられた。播種翌年の生育期間終了時には、播種数に対しで4.3%~7.1%の個体が生残し、それらの中には高さ1m以上に到達する個体も現れた。このような大きな個体はほとんどが水平根を形成していた。したがって、洪水等の撹乱により形成された裸地に散布された非休眠種子は、当年の秋あるいは翌年の春にすぐに発芽し、当年生のうちから水平根を展開して根萌芽を発生させることで、素早く新規の群落を形成できると推測された。
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