1.鳥類の果実利用と種子散布:新潟市の海岸林で行った秋季の鳥類調査により、18種354個体の鳥類の糞から964個の種子が得られ、そのうち20種類の植物を同定できた。メジロは12種類、ウグイスは9種類の植物の果実や種子を利用しており、本調査地の植物の種子散布に大きく寄与していた。エノキのように調査地周辺に多数生育し、中型からやや小型の果実を着ける植物が多くの鳥類によって利用されていた。鳥類が利用していた果実は、口角幅よりも有意に小さいか、または口角幅と統計的な有意差が認められない場合が多かった。ヒョドリと大型ツグミ類5種の口角幅は、本研究で種子を得られたすべての植物の果実サイズよりも有意に夫きく、海岸林内に多数生育し、大型果実を着けるタブノキ、シロダモ、モチノキなどの常緑広葉樹の種子散布に寄与していると考えられた。 2.常緑広葉樹の冠雪害調査:新潟市では、2010年2月に26年ぶりに80cmを超える大雪があり、その際に海岸クロマツ林内で多数の常緑広葉樹に冠雪害が発生した。常緑広葉樹の冠雪害は、小径木では幹傾斜と幹曲がりの被害が多く発生し、比較的大きな直径階で幹折れが発生していた。このような被害を回避するには、除伐や間伐を行って幹の形状比を小さくすることが有効である。しかし、除伐後間もない状態で大雪が降ると、樹冠率の高い林分では幹の強度を超える積雪が樹冠に堆積し、幹折れが発生しやすくなっていた。亜高木層を構成していた樹木のうち、タブノキの方がモチノキよりも冠雪害の発生が少なかった。海岸林内の中~下層に多かったトベラとカクレミノでは、トベラの方が冠雪害の被害が多かった。トベラは林縁に生育する個体は樹高が低く、形状比が小さい。トベラは耐塩性が極めて高い樹種であるため、海岸林の効果を高める上で、林縁にあるものを積極的に残すことが有効である。
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