1.森林整備(除伐)後4~5年を経過した林分と、森林整備を行っていない林分から、現在の樹高が5~8m程度の常緑広葉樹(タブノキ、モチノキ)をそれぞれ5~8個体伐採し、樹幹解析を行った。その結果、タブノキ、モチノキとも、樹高成長に対して森林整備の影響は認められなかった。直径成長では、モチノキはいずれも1触2.5mm/年と森林整備の影響は認められなかったが、タブノキは森林整備を行った林分で3~6mm/年の個体が多く、整備を行っていない林分の1~3mm/年に比べて直径成長が明らかに増大していた。このことから、森林整備はタブノキの形状比を小さくし、がっしりとした樹形形成に効果のあることがわかった。 2.10年前に植生調査を行った同じプロットにおいて再び植生調査を実施した。その結果、植生遷移の進行によって亜高木層や低木層に常緑広葉樹が優占し、それによる被陰で林床の草本植物が極端に少なくなっている(植被率1%程度)林分が見られた。また、亜高木層にタブノキなどの常緑広葉樹が優占している林分では、林床の低木類(アオキなど)が被陰によって枯れ上がりが進み、林内空間の開けた林分へと遷移が進行している実態が明らかになった。また、そのような林分では、10年前に多く見られたエノキなどの落葉広葉樹の稚樹がほとんど認められなくなっていた。 3.連携研究者および研究協力者らと共同で調査・解析を続けてきた環境省委託による鳥類標識調査データの解析と、捕獲個体の糞分析による鳥類の食性に関するデータをまとめ、日本鳥学会誌に3報続けて論文を掲載できた。海岸クロマツ林の森林遷移には鳥類による種子散布が重要な役割を果たしている一方で、植生遷移による林分構造の変化は、海岸林を訪れる鳥類相・個体数にも影響を及ぼしていることを明らかにした.また、3~5月の春季の気温が多くの鳥類の渡り時期に影響していることを明らかにした。
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