ブナ科における自殖回避機構を明らかにするため、コナラについては岐阜県関市百年公園において、ブナについては岐阜大学位山演習林内において、交雑実験を実施した。両種とも着花した各3個体を対象として高所作業車を利用して除雄を行い、交配袋を掛けて雌花を隔離した。その後、無受粉、自家受粉、自家花粉及び他家花粉の混合花粉による受粉の処理をおこなった。受粉した雌花は、受粉後8週間目まではほぼ2週間おきに採集し、FAAを用いて固定した。当初計画では、各採集時期に堅果15個以上を採集する予定であったが、交配実験直後に高温の晴天日が連続し、交配袋内の雌花の多くが死滅したため、当初計画通りに実験材料を採集することができなかった。なお、コナラに関しては平成22年度も開花するので再度交配実験を行う予定である。 ブナ及びコナラのマイクロサテライトマーカーから交雑に用いた母樹及び花粉親間で多型を示し、受精卵及び胚の遺伝子診断に利用可能なマーカーを探索した。これらのマーカーを用いて、受精後の胚の発達段階における遺伝子分析をおこなう予定であったが、前述したように十分な数の材料が得られていないので、平成22年度の交配により新たな材料を作成し、再実験を行う予定である。
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