コナラを用いて人工交雑(無受粉、自家受粉、他家受粉)をおこない、雌花・堅果の生存率と発育状況を観察した。交配様式にかかわらず受粉後 50-60 日の間に堅果内の 1 個の胚珠が成長しはじめ、残りの胚珠は成長停止した。他家受粉では胚珠の成長が続き、残りの胚珠は完全に退化した。交配様式による堅果サイズの違いは受粉後 90 日までは小さい。以降、他家受粉堅果が急成長し、無受粉や自家受粉堅果のほとんど全てが落果した。以上から、堅果の中絶は母樹が先導し、選択された胚珠が他家授精し、健全胚を形成することで完了し、接合子間競争を回避し、適応度を高める意義がある。さらに、DNA 多型マーカーを用いた胚や胚珠の遺伝子診断により、複数の胚珠が受精できること、花粉親間の競争が存在することが明らかになった。
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