近年水土保全機能や種多様性等の公益的機能増大を目的とした各種間伐事業が急速に行われているが、その有効性や課題を評価するためには、残存木だけでなく、間伐後の侵入・定着が期待される林床の下層植生量の把握が必要である。しかし、林床の下層植生量を広域的かつ迅速に評価する手法は皆無である。そのため、本研究では航空機LiDARによる林内下層植生量推定手法の開発を目指すものである。本年度は、三重県大台町総門山に設定した調査地を対象に航空機LiDAR観測を実施するとともに、対象地内40点において検証データの計測を実施した。また、あわせて現地調査における簡易下層植生被度計測手法について研究を行い、カメラ2台を利用した新たな計測手法について提案を行うとともに、その有効性についても明らかにした。最後に、林内下層植生の生育に関係すると考えられる林分諸量(平均樹高・林内光環境・葉面積指数)について、これまでに観測したLiDARデータ及び現地調査データを用い、その推定手法について検討を行った。その結果、本研究で提案する新たな解析手法("Top Surface解析手法")により、ほぼ自動で林分平均樹高が予測可能であるとともに、その解析により得られる指標は林内光環境・葉面積指数等と有意な相関関係にあり、林内下層植生の侵入及び生育に関係すると考えられる林内の光環境についても、航空機LiDARデータによる自動広域推定が可能であることが示唆された。これらの成果により、従来多大な労力と時間を要した林内光環境の広域マップの作成が、航空機LiDAR観測により短期間で作成可能になるものと考えられる。
|