帯状伐採後,伐採面を無植栽とした針葉樹一斉人工林分での林床植生の発達について明らかにする目的で,伐採後4年目(大分県;大分県民の森)および8年目(福岡県;九州大学農学部立花口圃場)の2つのスギ・ヒノキ人工林分で植生調査を行った.調査にあたっては,木本植物を主な対象とした.伐採後8年目の立花口圃場(ヒノキ林分)では,伐採直後および1年目の結果と比較することより,年月の経過にともなう植生遷移について検討した.また,4年目の大分県民の森(スギ林分)では,同時期に単木状,列状そして皆伐の3種の伐採が行われた林分と比較し,林床植生の発達と伐採法との関係について検討した. 立花口圃場での植生遷移においては,木本植物の個体数は徐々に増加し,伐採面と林縁部の増加率は同程度で,保残林内の2倍以上だった.8年目の種数は1年目よりも少なく,伐採直後と同程度だった.種の多様度は8年目がもっとも低かった.伐採後1年目には,前生の耐陰性の高い樹種と埋土種子に由来する先駆性樹種の両者が混在したものの,8年目では先駆性樹種が大きく減少し,伐採前の種構成に近づいたことが種の多様度の低下につながったと考えられた.しかし,伐採面の群落高は最大7m,林縁部でも3mを越え,発達した階層構造を有していた. 伐採種間での比較においては,単木状伐採が個体数,種数ともにもっとも少なく,林分の多様性を高めるには不適と考えられた.帯状,列状そして皆伐を比較した場合,個体数と種数に大きな差はなかった.しかし,列状伐採では林床の群落高は最大1.5mと帯状および皆伐の半分以下であり,多くが樹高50㎝以下の個体だった.帯状と皆伐では個体数,種数そして群落の階層構造も非常に近かったが,帯状伐採では,保残林分に由来すると思われる耐陰性の高い常緑樹種がより高い割合で存在し,今後の植生遷移においては皆伐よりも早く進行する可能性があった.
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