林地残材のバイオマス利用のための収穫が苗木の成長に及ぼす影響を明らかにすることが本研究の目的である。 試験地は宮崎大学農学部附属フィールド科学教育研究センター田野フィールド(演習林)である。平成23年春に伐採跡地にヒノキを植栽した。通常の植栽方法通り3年生ヒノキ苗を1.8 m間隔で植栽した。その後,各約10 m四方の,伐採作業に伴い発生した枝葉を総て取り除く対照区と枝葉をすべて残した区の2つの処理区を設定した。後者では枝葉は均一に散布した。処理対象木は各々16本ずつとなった。枝葉の栄養分としての役割を明らかにするために,各試験区の残されたもしくは取り除いた枝葉の単位面積あたりの重量を測定した。 地表面の枝葉の処理が土壌中の栄養分に与える影響を明らかにすることを目的として,各試験区に,A層直下に塩ビパイプを半分に割って作成した幅5cmおよび長さ30cmのライシメータをそれぞれ3ヶ所に設置し,降雨後に井戸内のボトルに貯まった土壌水を採取した。それぞれに含まれる全有機炭素と全窒素の濃度をTOC計を用いて測定した。 苗木の相対成長量は3年目にして両区で有意差が認められなくなった。ただし樹高は枝葉散布区のほうが有意に小さかった。土壌水は全有機炭素濃度は枝葉散布区のほうが高く,全窒素濃度は逆に低かった。枝葉散布区では窒素飢餓状態になっていたことが示唆された。
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