砂防施設立地環境が異なる2つの山地渓流区間(低ダム群施工区間、および不透過型砂防ダム施工区間)を対象として、リターからのイオン成分溶出現象とその動態が渓流水質のイオン組成に及ぼす影響を比較検討し、リター動態の支配要因と砂防施設立地環境との対応様式を明らかにすることにより、低ダム群工法が渓流生態系におけるリター動態並びに物質移動過程に及ぼす影響を評価した。 Quercus glaucaおよびCastanopsisのリーフリターを使用した室内溶出実験により、広葉樹リターと比較して常緑樹リターではクチン質の分解がイオン溶出開始を遅らせることが確認された。また、同リターとLepidostoma japonica幼虫およびAnisocentropus immunis幼虫による室内実験から、水生昆虫幼虫の摂食・営巣によるリター分解がイオン溶出を促進する可能性が高いことを確かめた。さらに、イチョウの落葉をもとに作成した疑似リターの現地渓流区間での分散実験により、不透過型砂防ダム区間では、荒瀬・平瀬でリターの補足と滞留が著しいことを現地調査で明らかにした。 今後は、今年度の室内実験結果が現地渓流でも展開されている現象なのかを確認するために、リター分解に関わる河床環境の類型化とリター分解過程の実態把握、河床環境に成立する水生昆虫群集の摂食と溶存成分濃度との現地渓流での関連解明、リター流入量、流出量、滞留量等の推定等が必要になると結論した。
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