研究概要 |
2項目の目的((1)樹木に特異的なストレス回避機構を証明すると共に、草本・木本植物の環境適応機構・ストレス耐性機構の違いとその役割,(2)葉緑体のエネルギー(還元力)生成機構とMitのエネルギー散逸機構との関係(代謝ネットワーク)の関係について、以下の3実験について実験を行った。 1-1:光受容体の温度変化を通じた光合成活性・量子収率に与える影響 生育温度、炭酸ガス濃度、UV条件、光強度の異なる環境において、ゲッケイジュまたはモミを生育させ、色素組成および蛍光測定を行った。その結果、生育温度では、その樹木の自生環境に近い温度で最も色素が組成が安定し、高炭酸ガス濃度において光合成を律速する葉内のコンダクタンスの低下がみられた。より弱光で色素組成が安定し、その時の光利用効率が有意に上昇していた。 1-2:樹木としての色素組成変化の意義 生育温度、UV照射、光環境のデータから、この色素組成の変化は、北方系樹木、特に針葉樹で顕著であり、さらに高山または林床などストレス環境において優に樹木特異的な色素組成となることが分かった。このことから、この色素変化は、樹木が持つ多様な環境条件で生きていくための環境適応であることが示唆された。 2-1:樹木のミトコンドリアおよび葉緑体のキノンredoxとAOX活性の年変化 樹木の表皮を20%剥離し、植物のミトコンドリア(Mit)のみに存在している電子伝達経路(AOX経路)を阻害する試薬を作用させ、葉緑体の光合成に与える実験を行った。その結果、草本植物よリレスポンスは遅いが樹木葉においても、Mitによる葉緑体の過還元力の散逸過程が存在することが分かった。しかし、年間を通じたその変化については、データが得られていない。
|