本研究では、実験的に造成したクヌギF1、F2実生採種園を用いて、DNAマーカーによりP(親)世代~F2(孫)世代までの母親と花粉親の寄与や近交係数の上昇を明らかにしながら、循環選抜により短期間で世代回転させた場合の改良効果(遺伝獲得量)の推定と実証を行い、広葉樹一般に適用できる実生採種園方式による効率的な育種法を提案することを目的としている。 関西育種場四国増殖保存園内のクヌギ第1世代精英樹クローン集植所(P)から得たオープン種子22家系で造成したF1実生採種園では、樹高成長の遺伝率は0.321と計算され、各家系1本の優良個体を残して間伐(家系内選抜)を行った場合に期待されるF2世代での改良効果は5.3%と推定された。また、間伐を行ったF1実生採種園から得られたオープン種子22家系で造成したF2実生採種園では、樹高成長の遺伝率は0.122と計算され、各家系1本の優良個体を残して間伐を行った場合に期待されるF3世代での改良効果は2.2%と推定された。 同保存園内のクヌギ精英樹クローン集植所(P)と間伐したF1実生採種園のそれぞれから得たオープン種子で造成したF1とF2の比較試験地、において、播種後5成長期経過時点における樹高成長を調査した結果、F1集団とF2集団で有意な集団間差が観察され、実現された改良効果は4.0%であった。 F1、F2実生採種園から得られる母樹別オープン実生の花粉親を同定するため、コナラ属で開発された既存のマイクロサテライト(SSR)マーカーを文献から抽出し、PCR条件や泳動条件等をスクリーニングした。次年度はスクリーニングしたSSRマーカーを用いて、F1、F2実生採種園を構成する母樹のSSR遺伝子型から、母樹別オープン実生の交配組み合わせ状況を明らかにする予定である。
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