研究分担者 |
並川 寛司 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (90192244)
板谷 明美 三重大学, 大学院・生物資源学研究科, 准教授 (70447861)
北村 系子 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (00343814)
飯田 滋生 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, チーム長 (10370272)
平川 浩文 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, グループ長 (30353824)
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研究概要 |
北限域におけるブナの分布拡大過程を多角的に明らかにすることを目的として,今年度はブナ林分の群落構造の把握,遺伝構造解析のためのサンプリング,野鳥による種子散布距離推定のための行動圏調査,空中写真判読のための写真のデジタル化を開始した。 群落構造の把握のために,ブナ林に20x20mの調査枠を設定し,樹種構成,胸高直径を記録した。樹齢を推定するために,成長錐によるサンプリングを行った。サンプルは研究室において年輪の読み取りを行っている。 遺伝構造の把握のために葉サンプルを研究室に持ち帰り,遺伝子解析を開始し,現在分析中である。この結果の一部から,北限域のブナ孤立林分の遺伝子構造には,複数の系統が存在する可能性が示唆されている。 過去の空中写真の判読に関しては,現在デジタル化を進めているが,枚数が多いために,現在作業を継続中である。 種子散布距離を推定するために,黒松内町添別ブナ林において,ヤマガラ1羽に超小型電波発信器を装着し,ラジオテレメトリ法による行動圏の調査を行った。この結果,北限域に生息するヤマガラの,秋の行動圏はおおよそ2から6へクタール程度であることが示唆された。このことは,ヤマガラがブナの種子を林分内に散布し,その距離はネズミ類よりも遠くへ運ぶ可能性を示唆する。また同時に,孤立林分内部におけるブナの密度上昇に貢献していることを示唆するが,数キロメートル離れた場所にある他のブナ孤立林分ヘブナ種子を運ぶ可能性は低いと考えられた。したがって,ブナが現在も北進中であると過程しても,ヤマガラが直接ブナの分布拡大に貢献するのではなく,むしろ一度定着したブナ林において,その分布面積の拡大に貢献していることが示唆された。
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