研究分担者 |
並川 寛司 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (90192244)
板谷 明美 三重大学, 大学院・生物資源学研究科, 准教授 (70447861)
北村 系子 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (00343814)
飯田 滋生 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, チーム長 (10370272)
平川 浩文 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (30353824)
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研究概要 |
ブナ連続分布ライン付近に存在する下チョポシナイ川流域において,ブナ孤立林の植生プロット調査を2ヶ所で行い,以下の結果を得た。プロット1のブナは樹齢80年から100年をピークとする若いブナ林であることが判明した。一方でプロット2では120年から140年の個体が最も多いものの,220年や301年と推定された個体も記録され,幅広い樹齢のブナが生育していることが明らかになったプロット2の樹齢301年のブナは,現時点ではブナ北限域における最高齢のブナであると考えられる。ブナは,樹齢が同じでもDBHが数十センチ異なる場合があるため,DBH階級の情報による森林群落の樹齢推定や回転率の考察には注意が必要であることが示唆された。下チョポシナイ川流域では一斉更新した弱齢林と老齢なブナを含む過熟林のパッチが混在しており,過去の林冠疎開の後にもブナの生育が順調で,次第に林冠を埋めつつある。林冠疎開後におけるブナの増加は,分布北限域のその他の孤立林であるツバメの沢や三之助沢のブナ林でも報告されており,ブナ北限最前線域における一貫した傾向である可能性が示唆された。 孤立ブナ林の遺伝子多様性解析の結果,分布限界へ近づくにつれて,遺伝子多様度は低下傾向にあった。また黒松内低地帯を通過したブナは,目名峠に到達した後に南北へと分散し,それぞれが分布拡大しながら現在の地理的分布を形成してきた可能性が示唆された。これらのことは過去のブナの分布拡大過程や,将来の北進を考察する上で貴重な情報である。
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