研究概要 |
1本課題では『軽度な採食の時に窒素流亡量が最小になる』との仮説をたてて、これを検討することを目的とした。そして、当年度は軽~中程度の採食を受けている奥日光地域においてシカの相対的活動程度、採食強度、およびシカ排除柵内外での樹木からの落葉生産量を測定するとともに、当年度までに得られた窒素循環量の測定値と採食強度との関係を解析した。 2日光の2つの調査地では、センサーカメラによる6月-9月のニホンジカの撮影枚数は0、12-0.61頭/日で、調査地間で違いはなかった。林床植物の採食強度は地上部生産量の16-27%であり、強度採食を受けている大台ケ原(46%)に比べると小さく、軽度採食であると判断された。樹木リターフォール量は、柵外で柵内より若干小さい傾向があり、低木層が消失して低木リターが供給されないためと考えられた。 一方,林床植物地上部現存量はシカ柵外の方が大きい傾向があった。そのため、柵外の林床植物地上部+樹木リターの有機物供給量は柵内とくらべて同様か若干多かった。 3昨年度までに、シカ排除柵外では柵内より土壌の窒素無機化と窒素流亡が抑制される結果が得られている。当年度の結果から,柵外での窒素無機化の抑制は地上部からの有機物供給農の減少によるものではないことが示唆された。 4本研究の結論として、軽度採食で窒素流亡が抑制されることが明らかになり、当初の年度計画「測定結果を解析して窒素流亡を抑えるための適切な採食圧を明らかにする」を達成した。
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