研究概要 |
1.解析対象マツ林の選定とマツノザイセンチュウの収集とサンプリング 九州各地に存在しているマツ林から,マツ材線虫病の被害度および球果結実状況を調査した上で,福岡県2箇所,佐賀県2箇所,長崎県1箇所,熊本県3箇所,大分県1箇所,宮崎県2箇所および鹿児島県1箇所から球果を採取した。また,一部箇所では,マツの枯死個体からマツノザイセンチュウを採取した。 2.マツノザイセンチュウ接種用苗の育苗 九州7県から収集したマツ球果のうち,十分な種子がとれた合計146母樹からの種子を平成22年3月に播種した。 3.各母樹およびマツ林のマツ材線虫病抵抗性評価 平成22年度以降に行う九州各地のマツの抵抗性評価を客観的に行うには,マツノザイセンチュウの接種頭数とそれによる病原力の差の影響を確認することが必要である。そこで,抵抗性クロマツ人工交配家系8家系の2年生苗に濃度の異なる線虫懸濁液を接種した。その結果,平均生存率はどの家系においても接種頭数が多いほど低下する傾向であるが,これまでの抵抗性マツ苗生産に際して行われる線虫接種頭数(マツ2年生苗1本あたり5000頭接種)で,概ね評価可能と予想された。 また,各地に存在するマツノザイセンチュウの病原力を客観的に行うには,マツ側の反応が安定的であるか検証する必要がある。そこで,これまでに育苗している抵抗性クロマツ2年生苗に対して,マツノザイセンチュウ島原個体群を接種(マツ2年生苗1本あたり5000頭接種)し,その生存率について過去に実施した結果と比較したところ,自然交配家系では同一母樹であっても年次間差が大きいが,人工交配家系では年次間差は存在しなかった。これまでの報告では最大15家系であったが,今回85家系について検証できたことから,人工交配家系を用いることで九州各地に存在するマツノザイセンチュウ系統の病原力評価を客観的に行えることが明らかになった。
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