研究課題
1.九州各地の10箇所のマツ林から採種した実生後代合計138系統に対してマツノザイセンチュウ(島原系統)を接種(以後接種検定とする)したところ、全く病徴が現れなかった健全個体の割合を示す健全率の平均は12%(3%~36%)、生存率の平均は16%(8~36%)であった。この結果はマツノザイセンチュウ抵抗性品種を開発する際に行った接種検定の結果と同程度であった。次に、佐賀県と宮崎県、福岡県と長崎県で今回試験に使用した種子を収集したマツ林について、接種検定後の平均生存率等を過去に行ったマツノザイセンチュウ抵抗性品種を開発する際に行った接種検定の結果と共に検証した。その結果、平均生存率は今回及び過去の接種検定の結果共に、佐賀県>宮崎県、福岡県>長崎県となり、各地域のマツ林が持つマツ材線虫病に対する抵抗性の強弱の順位が存在している可能性を示唆する結果が得られた。以上の結果は、野外に存在するマツ林でのマツ材線虫病抵抗性遺伝子を有する個体の頻度が異なる可能性があり、今後抵抗性品種の選抜や薬剤散布等によるマツ材線虫病の防除を効果的に行うためには、地域のマツ林の抵抗性を把握する必要があることを示唆するものであった。2.マツ材線虫病の被害が著しい九州地域の現存するマツ林からマツノザイセンチュウ14系統を収集し、宿主であるマツの遺伝的要因を均一化したアカマツ・クロマツの人工交配家系に対して接種検定を行ったところ、抵抗性評価が低い系統間の交配家系では平均生存率が42%(16%~89%)、抵抗性評価が高い系統間の交配家系では平均生存率が81%(56%~100%)となった。また、分散分析等による解析から、線虫系統によらずクロマツの抵抗性ランクが上位であるとの間で順位が大きく変動する結果は得られなかった。よって、高い抵抗性を有する系統のみを植栽することでマツ材線虫病の被害をかなり軽減できる可能性を示すことができた。
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九州森林研究
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