研究課題/領域番号 |
21580197
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
小林 政広 独立行政法人森林総合研究所, 立地環境研究領域, 主任研究員 (50353686)
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研究分担者 |
篠宮 佳樹 独立行政法人森林総合研究所, 立地環境研究領域, 主任研究員 (20353716)
釣田 竜也 独立行政法人森林総合研究所, 九州支所, 主任研究員 (30353775)
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キーワード | 森林土壌 / 有効水理特性 / 逆解析 / TDR水分計 |
研究概要 |
熊本県山鹿市のヒノキ人工林(KM)および茨城県石岡市のヒノキ人工林(IB)において土層の複数の深度にTDR水分計を埋設し、θを連続測定した。TDR水分計のプローブ長は30cmであり、水平方向に設置した。また、円筒試料を非撹乱採取し、排水過程のθ-マトリックポテンシャル(ψ)関係および透水係数(K)-ψ関係を求めた。KMにおけるの降雨時のθの増加のパターンは、非乾燥時と乾燥時とで大きく異なった。非乾燥時には、浅い層から順次θが大きく増加し、深部へθの増加が伝わったが、乾燥時には、各深度でのθの増加は小さく、短時間で深部までθの増加が伝わった。これは、乾燥時の撥水性と土層の不均一のため著しい選択流が卓越し、土層があまり水を貯留せずに深部に速やかに排水したためと考えられる。一方、IBでは、乾燥時でも浅い層から順次θが大きく増加することが多かった。両試験地の観測結果に逆解析を適用した。解析には水移動解析ソフトウエアHydrus1Dを用いた。降雨中のθの変化を最もよく再現するようにθ-ψ関係の関数(van Genuchten式)のパラメータを最適化させた。飽和含水率θsおよび水分特性曲線の変曲点の位置を表すパラメータαをフィッティングパラメータとした。KMでは、土壌が湿潤なときには、逆解析で推定されるθsは非撹乱試料で求めたものに近かったが、土壌が乾燥すると、θsは下層も含めて著しく小さくなった。これは、少ないθの増加でψが大きく上昇することを意味し、撥水性によって選択流が生じ雨水貯留に寄与できない孔隙が多くなったためと考えられる。一方、IBでは、逆解析で推定されるθsがKMの場合のように乾燥時に下層まで小さくなることはなかった。IBの土壌は火山灰を母材とし比較的均一な構造であるため、地表近傍で選択流が発生しても流下とともに拡散し、土層全体に行き渡りやすいためと考えらる。
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